エンビィ 【完】
あたしがここ来た、2つ目の理由。
「でも…それでも…あたしは、ユキノさんに勝ってみせるわ。あなたのことよく知らないから、何が得意で不得意かも分からないけど、手当たり次第にぶつかっていくから―――覚悟しといて」
はじめて、本心から笑いかけた。
それもユキノ相手に――。
するとユキノは、悪戯に口許に笑みを作った。
「ふふふふ、それは楽しみですわ」
それは、今までのどんな…
どんな魅力的な笑みよりも
「売られた喧嘩は、丁重にもてなすのが私のモットーですの」
――――人間らしかった。
モンナンジュを出ると、すでに百瀬が待機していた。開かれてるドアに乗り込もうとして手首をとられた。あたしだってそんなに体温が高い方じゃないけど、そのあたしが冷たいと感じる温度に驚く。