エンビィ 【完】
「……それのどこが…あたしがユキノさんより優れている理由なのよ」
意味が分からない、
と呆れていれば、やっぱりユキノは早口気味に続けた。
「執事にそう言わせるだけの価値が貴女にあるってことですわ」
「そんなの……執事だったら誰だって言うわよ」
「“たとえ会社が潰れて一文無しになろうと、それでも玲奈様だけが俺のお嬢様です”」
……っ、
「――――どれほどの執事がこんなこと言えるかしら?」
もう目を瞠ることしかできないあたしが、
黒真珠の瞳に映っている。
ユキノはたおやかに微笑むと、あたしの背中をおして車に押し込んだ。
「出して頂戴」
パタンとドアを閉めたあと、窓をノックし少し隙間の空いたそこで。やはり我が物顔で百瀬にそう告げたユキノは、未だに呆然とするあたしを一瞥したあと意味深に笑った。