エンビィ 【完】
時間の感覚はない。
見慣れた風景を視界が遮ったとき、あたしは深く息をすってシートにもたれかかった。
そんなあたしをバックミラーで確認する百瀬。
「……なんて恥ずかしいことをベラベラしべってんのよ…」
「正直な気持ちを有りのままに話したまでです」
思わず額を抑える。
「玲奈様」
「……なによ」
「ユキノ様とのお食事楽しかったようですね」
「は?……なに言ってんのよ、普通よ普通」
まあ―――、
また付き合ってやってもいいかなと思う程度には普通だった。
あれほど敵視していたユキノとの会話で心が軽くなるなんて………その事実に口許を緩めていたのを百瀬が見て安心したことをあたしは知らない。