エンビィ 【完】




それから白い桜は散りゆき、ユキノに出会った新緑の頃が過ぎ去り、赤と黄色に彩られた季節になった。




「玲奈」


「呼び捨てにしないで」


「どおよ?俺の黒髪。似合うだろ?」


「日本人なら似合って当たり前」


「れーな」


「呼び捨てにしないでって言ってるでしょ」


「俺、玲奈と同じ大学に行くために頑張るよ」


「あっそう、勝手に頑張って」


「ひでえ」


「絶対に入れないと思うから」


「決めつけんなよ」


「同じとこに入りたいんなら、まずは性転換しなさいよ」




驚愕で固まるクラスメイトを無視して、教室を出る。



あたしは以前よりも、…たぶん、

ううん、少しは、

気楽に生きられるようになった気がする。



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