エンビィ 【完】
ブルーの膝まであるドレスが、歩くたびに舞う。
腰辺りから膜を張るように、薄く覆う黒のベールは、このドレスを大人っぽく仕上げる手伝いをしている。
それにしてもなんて潮風が強いの。
主催者が外国人の今回のパーティは、船上。
豪華なのはいいけど、まだ5月だから寒いのよ。
高2になったあたしに母が用意してくれた、このブルーのドレスはこの船上で一番素敵。
だれもあたしに、勝てやしない。
ボーイから貰った、ピンクゴールドに色づくシャンパンを口に運びながら、船上のお嬢様を値踏みしていく。
その中には、
あたしと同系統を身に纏った若葉もいた。
そういえば、シンデレラガールってなんの話?
あたしはお姫様ってポジションは好きだけど……シンデレラは嫌いなのよ。
だから"若葉かあたしか"って質問には、ためらいもなく「若葉」を選んだ。
だってあたしが欲しいストーリーは、シンデレラじゃない。
"本物"が欲しい。
目の前の甘いシャンパンも、肌触りのいいドレスも、煌びやかなパーティも。
全部全部。
シンデレラストーリーのおこぼれ。