エンビィ 【完】
スイセイノゴトクキエル
―――勝ち逃げ―――
「―――…だからでしたの…表立って出てきませんでしたもんね」
「お気の毒に…」
「本当にね……彼女ったら、ほら、ちょっと奇抜な人だったけれど、人が羨むような美貌は本物ですし」
「それに私、彼女の群れない態度も尊敬していましたのよ」
「ええ。なにより彼女は……あの家の血を継いでいるというのに」
「―――なんて勿体ないことをしたのかしら」
“勿体ない”
口々に嘆かれる大合唱は耳障り。
震える足で階段を上がる。
怒りで震える足は、今にもへたり込みそう。
「玲奈様…大丈夫ですか?」
「はっ、至って健康よ」
だからこんな石段で……見苦しく…へたり込んだりなんかしない。
あたしがアイツのせいで…そんなザマを晒すなんて冗談じゃない。
「―――ねえ百瀬。アイツ―…――んでしょ?」
「そう…伺っておりますが…」
「どんな?」
「玲奈様。そのようなお話、いまは不謹慎かと」
「あたしに口ごたえしないでよ」