エンビィ 【完】
「伊織様はさぞかしご傷心のことでしょう」
「ユキノ様を溺愛なさっていたのは、儚い命のせいもあったのね」
「ああ、なんて嘆かわしいのかしら」
「――はっ、」
今も尚震えている足は。
決してユキノがこの世から消えたと、訃報もらって、悲しんでいるからなんかじゃない。
「玲奈様?」
「……ざまーないわね」
「玲奈様!」
咎める百瀬の視線と声を背中に聞きながら、目的地はないのに彷徨う足取りは何かを無意識に探していた。