エンビィ 【完】
「俺はユキノにそう思われてても構わねぇけど……間違ってもユリに向かって二度とその言葉吐くな」
「…ケイ君!」
「次その口開いたら、許さねぇぞ」
「ケイ君!!」
三度目の呼びかけでユリと呼ばれた女は、ケイという男の腕を掴んであたしから引きはがそうとする。
でも男はあたしの胸元を掴みあげる手を離すどころか、力をいれてグッと近づき、是が非でもあたしを頷かせようとした。
……ばか、じゃないの。
あたしが、こんなどこの馬の骨かも分からない男に…従って、首を振るわけがない。
鐘のようにドクンドクンとなる心臓とは裏腹に、あたしの口許は、男を見下げたように歪んでいる。
それが気に触ったのか―――…