エンビィ 【完】
力の抜けていく男の腕に、女は軽く微笑む
―――が。
今までの表情をがらりと変えて、
あたしが気おくれするほど、目を眇めた女は、あたしと男の間に入り込むと、
「―――あなたではユキノに勝てません」
この場に、全然関係ない一言を漏らした。
「…は、」
な、に……あたしがなんでこんな見ず知らずの女に、こんなこと言われなくちゃならないの…?
屈辱的なそれに、カッとなって、思わず女の髪を掴みあげる寸前だった。
「……調子に乗らないでよっ!……あたしがユキノに勝てないのはユキノの家のせい!」
そのせいで、あたしも女には関係のない、余計なことを口走ってしまった。