エンビィ 【完】



「ケイ君行きましょう」


「おいっ……ユリ!!」



ずんずんと、会場のほうに男を引っ張っていく女。


その肩では、真っ赤な薔薇

ユキノに相応しい色の薔薇が、揺れていた。




「……玲奈様」


「帰るわよ、百瀬」



冷静さを欠いていたあたしは、ここで初めて自分の現状を理解した。バラバラだったはずのベクトルは、あたしたちのほうに集中していた。


でも今は、それを取り繕うのも、面倒。

石段を下りようとするあたしを、百瀬が引き留める。


< 169 / 195 >

この作品をシェア

pagetop