エンビィ 【完】
セツボウカラハジマッタ
誰かが泣いているとき、誰かが笑っている
――――とはよく言ったものである。
そのカラクリが世に知れ渡ることはない。
生涯、カラクリの上に成り立った嘘に、行き場のない感情を持て余しながら、生きて、そして死んでいくはずだ。
そのカラクリが世に知れ渡ることはない。なぜならそんな大がかりな大芝居を打つ理由が見当たらないから。
だって誰が、
だれが、信じるというのだ。
たった一人の――――遊び半分か。
はたまた真剣に願ったのか、どちらにせよ、その願いを約束だからと言って叶えるなんて―――――誰が鵜呑みにするというのだ。
だから、そのカラクリが世に知れ渡ることはない。