エンビィ 【完】
―――赤いドレス―――
マンションの鍵を開ければ、すぐに落ち着く空間に包まれた。
部屋に誰もいないんじゃないかと不安をくすぐらせたのは、そこが真っ暗だったからだが、その理由はすぐに分かった。
ベランダに、月夜を見上げる姿。
「あっ……おかえりなさい」
足音に気がついたのか、
はっとした表情の相手に、ゆるゆると首をふって「ただいま」と笑った。
「……お葬式……ユキノ様のお葬式、どうでしたか…?」
気遣うような声音に、身を委ねながら、
「ケイ君がね……不憫で仕方ないの…っ…」
思ったままのことを吐き出してしまった。
今日は、いや、少し前から、
心が鉛になったように重くて、苦しかった。
そしてすごく疲れた。