エンビィ 【完】
「………ユリ様…」
「反対だったの………今回はっ…さすがに反対だったの…」
「……うん…」
「でもユキノは…最後の最後まで聞かなかったのよ…」
「…うん」
「“大丈夫ですわよ、このユキノが一人いなくなった程度で揺らぐようなこと、何もなくってよ”…だなんて…」
決して投げやりにではなく、大胆不敵に。
まるで、
サナギが蝶に生まれ変わる過程のように。
あるいは―――
善と悪を手慣れた駒のように扱うような軽快さで―――そう断言していた。
「…うん……間違ってるけど」
親が子供をあやすように、
「間違ってないね」
優しく頭を腕で包み込み、背中を撫で、落ち着かせるその少年の瞳は穏やかだ。