エンビィ 【完】
「それにしても、貴女は、日本の葬式のあり方をご存知ないのですか?」
「ふふん。心得ているが」
せせら笑いのそれは、間違いなく知識はあるのだろう。
「嫌がらせですか?」
「なにが?」
青年の言わんとするところを分かっている少女だが、のらりくらりと交わすのはお手のもの。
そして、それは、青年にとっても日常茶飯事の出来事。
「死者に―――赤いドレスはない、と申し上げているのです」
「ああ、美しかったな」
青年は、「貴女という…人は」と内心呆れていた。
「黒いドレスにはなさらなかったのですね」
「なぜ?」
「だって彼女は、黒いドレスを好んでいたでしょう?」
「そうか?」