エンビィ 【完】




「ああ。お前がユキノを嫌いなことは知っている。だだ…」



青年は、深みのある瞳で、言葉を待つ。

「ただ、お前が」

そう、少女は、物語が終わった今でも、腑に落ちない。




「殺してほしいと願うほど、毛嫌いしているとは思わなかった」


「毛嫌い?……違いますよ」



まさか、と青年は笑う。



「違うのか?」


「ええ」



怪訝に顔を顰める少女。




「ユキノさんのことは、あの外見をのぞけば、嫌いではありませんよ」


「お前は、意味が分からない」


「彼女は貴女と違って、全てを突っぱねますからね」


「………」


「全てを受け入れようとはしないところが、好きでした」



青年は視界を開かせると、

穏やかな視線を少女に向けた。それに付き合っていれないと、黒真珠のような瞳が呆れの色を映した。



< 190 / 195 >

この作品をシェア

pagetop