エンビィ 【完】
「ああ。お前がユキノを嫌いなことは知っている。だだ…」
青年は、深みのある瞳で、言葉を待つ。
「ただ、お前が」
そう、少女は、物語が終わった今でも、腑に落ちない。
「殺してほしいと願うほど、毛嫌いしているとは思わなかった」
「毛嫌い?……違いますよ」
まさか、と青年は笑う。
「違うのか?」
「ええ」
怪訝に顔を顰める少女。
「ユキノさんのことは、あの外見をのぞけば、嫌いではありませんよ」
「お前は、意味が分からない」
「彼女は貴女と違って、全てを突っぱねますからね」
「………」
「全てを受け入れようとはしないところが、好きでした」
青年は視界を開かせると、
穏やかな視線を少女に向けた。それに付き合っていれないと、黒真珠のような瞳が呆れの色を映した。