エンビィ 【完】
―――傍観者―――
そこは、雪解けのような寒さを思わせる一室だった。
見上げれば、天窓から降り注ぐ木漏れ日。
天井はひどく高く、壁もそびえるほど高い。
それでも圧迫感を感じないのは、それに匹敵する床面積があるからだ。
そんな静かでいて、清潔感のある一室の中央部には、
ガラスケース。
ただぴっろい部屋に、そのガラスケースがぽつんと一つだけ。
男は部屋の一角で客を待っていた。
男は自分の手のひらを見ては、考え事をする。
握ったり開いたりを繰り返す。
自分の一部であるはずなのに、まるで他人の一部を借りているような錯覚。
それからほどなくして―――、
訪問者は微かな足音を響かせ、部屋に入り込んだ。
ガラスケースを不思議そうに一瞥したあと、
男に視線をなげた。
「たしかめてくれ」
男は自分を見てくる訪問者の意図がくめず、ガラスケースを指さす。
それに対して訪問者は片頬をあげた。