エンビィ 【完】
「この丁重な装いはお前が考えたのか?」
“丁重な装い”
それが何を指すのか、男は自分の中での表現が微妙に異なったので答えるのが遅れた。
「俺じゃない。じいさんだ」
考えたのも、訪問者が言うところの“丁重な装い”をさせたのも。
じいさんは花を愛でるように優しい瞳で。
最高傑作の芸術品を生み出す手つきで。
ガラスケースの中身に総仕上げをした。
「棺桶にでもぶちこんでくれていても良かったんだがな」
じいさんと温度差のある訪問者は、
ガラスケースの前でとまると、そんなことを言い出した。
「そういうことは事前に言ってくれ」
男は腰をあげ、訪問者の横顔をみつめる。
その横顔は満足気のようにみえる。
男はこの訪問者に会うのは今日で2度目だった。