エンビィ 【完】
「なんでしょう玲奈様」
「あの女についていますぐ調べて!」
「いや…あの方は…」
「あたしに口ごたえしないでって言ってんでしょ!!」
ドレスの原型はない。
ただの青い布きれに戻り、床に散らばっていく。
誰もが羨むような、ブルーのドレスだったのに。黒のベールは、同世代の中で一番大人っぽさを演出していたはずなのに。首元の大きなパールだって、人目を引くはずだったのに。
――――あの女が誰よりも美しかった。
容姿もだけど、なにより許せないのは、あのシンプルな黒のドレス。
あれが一番許せない。
どこにでも…売ってありそうな……デザインのドレス。
あんな凝ってないデザインのドレスが、素敵に見えた。
それが格の違いだとでも――?