エンビィ 【完】
「玲奈、伊織くんたちもいらっしゃってるな」
「ええ。パパのおかげね」
父が主催するパーティに、父に頼み込んで伊織と、その妹を招いた。伊織は渋い顔をしていたらしいが、どうにもあの女のほうが快諾したらしい。
パーティは苦手なんじゃなかったの…?
もちろん、溺愛している妹が心配のようで、伊織も参加している。
伊織とその妹を招くのに成功しておかげで、父は鼻が高いと誇らしげに自慢している。
それすらも忌々しいけど……まあ、いいわ。
だって、今日のパーティの主役は、アンタに譲ってあげるって決めたんだもの。大切な主役を譲るんだから、来てくれなくちゃ困るのよ。
女はお嬢様連中に、息もつぐひまもないほど、質問攻めされていた。
そんな女を見守る伊織は、一人で壁際にいる。
確かに……近寄りがたい男。
下手に近づいたら、痛手を負いそう。