エンビィ 【完】
本当に、ずっと見ていたくなるほど…綺麗な顔立ち。
それなのに……
性別関係なく会場の視線を独占しながらも、その視界に入れているのは、ただ一人。
溺愛する、妹ただ一人。
それを壊してみようか。
その妹だけを見つめる瞳に、あたしという存在を映してやろう―――とグラスを持って移動した、その刹那、伊織のほうが動いた。
あたしは立ち止まり、眉を顰めて、伊織を見た。
伊織は、中心に進む。
その中心にいるのは、今日みんなを楽しませてくれる主役。
それを遠目に見ていた。
そしてそれが―――どれほどの溺愛ぶりかも。
伊織があと5秒も動くのが遅ければ、女はパーティに出席していた男に話しかけられていた。
それを食い止めた伊織と、そしてその妹は、一言二言交わしたあと、微笑して会場を出ていく。
まさか……そのまま帰るつもりじゃないわよね?