エンビィ 【完】
どんなに我儘を言おうと、最後まで付き合ってくれていた百瀬が。
しかも主は、あたしでなく父だと。
学校からの帰り道は、いつもは百瀬に迎えてきてもらうけれど、とてもじゃないけど顔をみる気になれず、違う運転手に頼んだ。
何とも言えない心持ちに、イライラを感じながら―――
「ちょっと、ここどこなの?」
窓を横切ってく視界が、家までの帰り道じゃないことに気づく。
すぐに停車した場所は、老舗ホテルだった。
運転手が差し出してくるメモを怪訝に感じながら、開く。
メモには、丁寧な文字で“ロビー55”とだけ書いてあった。
「だれから?」
それに運転手は首を振った。
詳しく聞けば、うちの生徒から預けられたらしい。
百瀬なら……絶対あたしの意思を聞いてから、行くか、行かないか、決めてくれるのに…。
この運転手……このまま、あたしがなんかの事件に巻き込まれたら、どうすんのよ。