エンビィ 【完】




どうやってソファーから立ち上がって。

エレベーターに乗って。

それから車に乗って。

そして、

家に帰って来たのか覚えてない。




ただ分かるのは、

心が鉛のように重いことだけ。



あたしの血や育ちを馬鹿にしてきたクソ女たちの言葉は、あたしにとって屈辱ではあったけど、それはあたしの心に怒りを生んだだけのことだった。


悲しみよりも、怒りだった。


――――でも伊織の言葉は違う。


あたしという人間を否定したのに、屈辱的な気分を打ち消すほどの、どんよりとした鈍い痛みを植え付けた。





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