エンビィ 【完】
あたしが男だったら、
あの女のことをまるで、媚薬のような女だと称賛する。
けど、残念ながらあたしは女。
あたしにとってあの女は、疫病神であり、背後霊のような存在であり、もうホントに、毒としか言いようがない。
頭を占めるのは、
どうやったらユキノを超えられるかということ。
みんなユキノがどれほどの技量なのか知らないくせに、家柄と会社の大きさ、そしてあの容姿だけでユキノを評価する。
それが―――堪らなく我慢ならない。
あたしのほうが、才能があるかもしれないのに。
ユキノより上かもしれないのに。
どうやったら……それを認めてもえるの。
「玲奈様、デザイナーの方がいらっしゃいました」
それだけ告げて、出ていこうとする百瀬を引き留めた。
百瀬を裏切り者だという癇癪のような怒りはまだ消えないけれど、でもあたしは以前と同じように接している。
それは百瀬も変わらない。