エンビィ 【完】




あたしが男だったら、

あの女のことをまるで、媚薬のような女だと称賛する。


けど、残念ながらあたしは女。

あたしにとってあの女は、疫病神であり、背後霊のような存在であり、もうホントに、毒としか言いようがない。



頭を占めるのは、

どうやったらユキノを超えられるかということ。


みんなユキノがどれほどの技量なのか知らないくせに、家柄と会社の大きさ、そしてあの容姿だけでユキノを評価する。




それが―――堪らなく我慢ならない。



あたしのほうが、才能があるかもしれないのに。

ユキノより上かもしれないのに。

どうやったら……それを認めてもえるの。




「玲奈様、デザイナーの方がいらっしゃいました」



それだけ告げて、出ていこうとする百瀬を引き留めた。

百瀬を裏切り者だという癇癪のような怒りはまだ消えないけれど、でもあたしは以前と同じように接している。


それは百瀬も変わらない。




< 75 / 195 >

この作品をシェア

pagetop