エンビィ 【完】
「クリスマスパーティのためにオーダーしたドレスを決めてほしいの」
「……俺がですか?」
怪訝そうにあたしを見てくる百瀬に、あたしは嘲笑するしかなかった。
化粧台に、一列に並べられた小瓶の中の生地は、
最初はブルーから始まり、オレンジ。
黄色、ピンク、水色――――…
そして最後のほうは、全て黒。
あたしは、デザイナーや衣装屋がどんな色を勧めようが、黒にしか目がいかなくなっていた。
それが自分でもわかっていて。
クラスメイトには“人形ぽっい”と、言われた。
これが何を指すのか……理解できないほど、あたしは抜けてない。
ほんとに、
なんて呪いをばら撒く女なのよ…。
――――だから、今日は百瀬に選んでもらうと思った。
百瀬は微妙な顔をしながらも、次々とドレスを着るあたしに付き合った。
あたしはあたしで、全身鏡でドレスをチェックしながら、もっと白くて透けるような肌だったらとか、あと数センチ背が高くて、スタイルが良かったらとか。
そんなことを考えていた。