もう一度その名を呼んで

叔父上の言葉の通り、私はずっとこの屋敷にいる訳では無い。

私は地方に暮らしている両親と共に、清国(現在の中国)へ渡る予定だ。

ごく僅かだけど清国で勉学に励む女の人もいるし、苦い思い出ばかりが残るこの国にずっといるよりかは大分気が楽だと思う。






暫くして支度を終えた叔父上は、辰の刻に訪れたチャンリョン様の挨拶を受けていた。


「暫くの間お世話になります。」

「うむ。屋敷内の事はユリに聞くと良い。」


叔父上がそう言うと、チャンリョン様はこちらに顔を向け優しく微笑んだ。


『よ、宜しくお願い致します・・・。』


武官に適した体つきに、精悍な顔立ち。若くして内禁衛将への昇進が決まっている。これだけの好条件が揃っているのに、未婚だと言うから驚きだ。

風の噂だと、忘れられない人がいるから婚礼を挙げられずにいるとされているけれど、真実かどうかは分からない。






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