もう一度その名を呼んで

この屋敷は何れ、チャンリョン様とソウンの物として明け渡される事となる。

そしたら二人は・・・。


「何をそんなに悩んでいる?」

『・・・い、いいえ!何でもありません。』


び、びっくりした・・・!

チャンリョン様は、今日は非番だったらしく普通の両班の格好をしている。

もう亥の刻(午後9時~午後11時の間)過ぎているし、明日は早いと聞いていたのでもう寝ていると思ってたから、私室から近い東屋への訪問は予想外だった。

武官らしく気配なく現れる事もあるから、時々びっくりしてしまう。


「私も此処に座ってもよいか?」

『どうぞ・・・。』


いつもは挨拶程度しかしないから、二人だけで話す事なんて今までほとんど無かった。

取りあえず乱雑に置かれた書物を整え、清国から来た手紙と権利書を急いで隠した。

今のチャンリョン様に見られてはまずい物だ。


< 20 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop