もう一度その名を呼んで
改めて机の向かいにいるチャンリョン様を見つめる。
すらりとした長身、精悍な顔立ち、武官なら誰もが羨むであろう武術の腕、王様のお傍で仕えるのに問題の無い身分。
初めて会った時もこんな人が世の中にいるんだ、って思った程恵まれている人だった。
「これは李商隠の詩だな。一番好きな詩だ。」
『はい。叶わぬ恋を詠んだ詩として有名ですね。』
自分の字と絵を見られたのは恥ずかしかったけれど、詩を語れるのはとても嬉しい事だった。
ソウンもこの詩が好きだし、王様もこの詩を気に入っている。李商隠の詩には色んな人を虜にしてしまう、目に見えない魅力があるのかも。
「別れる辛さは何も恋人同士の事だけでは無い。もう一度会いたいと願っても、名前も身分も知らない相手なら尚更会う事は難しくなるのだな。」
『チャンリョン様はどうしても会いたいと思う、会いたくても会えない人がいるのですか?』
ソウンの事を知っているとは思えない。チャンリョン様の性格を考えたら、身分も今まで築き上げてきた何もかも捨ててソウンを弟として傍に置きそうだから。