もう一度その名を呼んで
「私は・・・。」
『ん?』
まん丸の月が浮かぶ空を見上げ、ソウンは静かに話しだした。
「私は庶子の身でありながら姉様と出逢い、こうして武官になる事が出来ました。姉様や旦那様に感謝してもしきれません。」
武官の採用試験でもある武科を受験する事は出来たけれど、庶子は文科を受験する事が許されていない。
父が両班でも、母が中人(チュンイン)なら中人として、奴婢なら奴婢の身分として生きていかなければならなかった。
ソウンのように大きな才能を持っていれば持っている程、周囲はよってたがって傷つける。この国に庶子の居場所など無いとでも言うように。
ソウンは心に秘めた悲しみを飲み込むかのように、寂しげな表情を浮かべた。
「兄上・・・そう呼ぶ事は叶わなくても、傍にいられるだけで幸せです。」