もう一度その名を呼んで
「来月私は内禁衛の従事官となります。今以上にチョ武官様を支える事が出来るのです。」
寂しげに笑うソウンを見ていられなくて、私も空を見上げる。
「相見る時難く別れるも亦(マタ)た難し、東風は力無く百花残う
春蚕(シュンサン)死に到たりて糸方(マサ)に尽き、蝋炬(ロウキョ)灰と成り涙始めて乾く
暁鏡(ホウギョウ)に但(タ)だ愁雲鬢(ウンビン)を改め、夜に吟ず応(マサ)に覚える月光の寒きを
蓬山(ホウザン)此より去ること多路無し、青鳥殷勤探り看ることう為さん」
晩唐の詩人、李商隠の詩だ。彼の詩は難解な物が多くて、様々な解釈がされている。
「会う事も難しく、別れるのも難しい。春の風は力無く吹き、多くの花はくずれてしまった。
春の蚕は死ぬまで糸を吐き続け、蠟燭が燃え尽きて灰になるまで蠟涙を流し続ける。
朝鏡を見ても髪の毛が衰える事が気がかりで、夜に詠っても一人きりなので月の光が寒々しく感じるであろう。
蓬莱山までさほど遠くは無い。青い鳥よ、どうか私の為に彼女の様子を見てきてくれないか。」