あじさい~揺れる想い~


「ねぇ、浩平・・・」

急に聞こえた声に顔を上げた浩平の頬を手で挟みながら、じっと目を見つめた。



うわぁ・・・・・・めっちゃ恥ずかしいし・・・・・・。


何が起きたのかわからないといった様子の浩平は目を真ん丸にして、驚いていた。

それもそのはず、私からこんなことをしたのは今日が初めてなのだから。




「ねぇ・・・・・・私からおねだりしないとあかん?」


目を見つめ首を傾げてそう聞いた瞬間に、浩平は私の頬に手を置き、キスをしてきた。


そのキスがいつもとは違い、激しいものだったので、私の腕の力は抜けて、だらんと垂れ下がるのみだった。


「ゆかり・・・ゆかり・・・」

と私の名前を呼ぶ声が切なくて、私は力が入っていなかった腕を彼の首の後ろに回した。




「ほんまにいい?」


抱きしめながら、聞いてくる浩平の声は、決して嬉しそうなものではなくて、遠慮がちなものだった。



そんなこと聞いてるけど、我慢なんてできるの?



「私が嫌って言ったら我慢するの?」



少し意地悪かなと思いながらも、私は浩平に聞くと、抱きしめていた腕の力を緩めて、私を見つめた。



きっと、『ゆかりが嫌なら我慢するよ』って言うんやろうな・・・・・・。



私は浩平の真面目な性格上、そう言うと確信していたが、彼の言葉は私の予想を裏切った。




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