あじさい~揺れる想い~
「・・・・・無理。・・・・・・もう我慢できへん」
そう言うと同時に、私の体は浮き上がり、浩平の顔が近くにあることに、今の状況を把握した。
お、お姫様抱っこやし!
ち、ちょっと、浩平?
どうしたん?
私が浩平の顔を見るも、彼は真っすぐ前を向き、真面目な表情をしながら、歩き始めた。
彼が向かっている場所くらい私にもわかる。
それよりも、彼が我慢できないと言ったのが信じられなかった。
でも、そのわがままは、嫌ではなかった。
自分の気持ちを正直に出してくれたことが嬉しかった。
「ゆかり、降ろすよ」
そう優しい声で言われたので、私は頷くと、ゆっくりとベッドに降ろされた。
背中に感じていた浩平の腕は、柔らかな布団へと変わった。
目を開けると、真っ白な天井が見えて、自分の状態をまざまざと知らされ、顔が熱くなってくる。
しかし、そんな暇など与えないくらいすぐに、目の前の天井は、浩平の真剣な顔に変わった。
「ほんま、最低やな・・・・・・俺」
どこまでも自分を責める浩平の真面目さに、私は笑みさえ零れてきた。
「な、何笑ってるん!」
浩平が驚くのも無理はない。
自分の本能のままに押し倒されているのに、笑ってるのだから。
「だって・・・躊躇しすぎ・・・」
笑い転げる私に、浩平は唖然として、言葉を失っていると、私は腕を伸ばし、浩平を抱きしめた。