あじさい~揺れる想い~
私は、浩平の熱を感じながら、彼の優しさをも感じていた。
ほんまにどんな時も真面目で、優しいんよな・・・。
我慢して我慢した末に抱いている今でさえ、荒々しさよりも優しさの方が勝っている。
快楽に溺れ、目を閉じると、真っ暗な中に、二人の息遣いだけがくっきりと耳に入って来た。
普段では絶対に聞くことができない声に、私の体がどんどん熱くなっていく。
気を抜いてしまうと、どこかに飛んでいってしまいそうだったので、必死にしがみついていた。
その時、ふと脳裏に浮かんだ人物に、体が強張ってしまった。
な、なんでこんな時に現れるの・・・・・・?
突然現れた鋭い視線の持ち主の姿を忘れようとすればするほど、私の方を見つめ、離れてくれなかった。
異変に気付いた浩平に、「痛い?」なんて気遣いをさせてしまって、自分が犯してしまった罪に苦しんだ。
浩平に抱かれながら、他の人のことを考えるなんて・・・・・・最低・・・・・・。
私は自分を責めながらも、浩平には「大丈夫」と笑顔で答えていることにさらに罪悪感が募った。
そして、情事が終わり、優しく抱きしめられている間も、浩平に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
――渡辺くん――
なぜあなたは私のことを見ているの?
私の中には彼に対する疑問ばかりが渦巻いていて、どんどんぬかるみに嵌まってしまいそうだった。