あじさい~揺れる想い~
花火
「テストの最終日に隣の市の花火大会に行かない?」
明日から期末テストが始まろうとしていた7月の暑い朝、学校に行くまでの道のりを歩きながら、浩平は隣にいる私に言った。
彼氏に誘われて、断る理由なんてない私は、すぐにと返事をした。
「ゆかり・・・去年みたいに浴衣着て来てくれる?」
珍しい浩平からのリクエストに、私はきっと満面の笑みだったに違いない。
なぜなら、私が頷いて、浩平の顔を見たときに、彼の顔も緩んだのがわかったから。
そして、繋がれた手が離れないように、握り歩いていた。
1ヶ月ほど前に、学校に行くときに初めて手を繋いでから、自然と毎日手を繋ぐようになっていた。
「楽しみやなぁ・・・・・・ゆかりの浴衣姿がまた見れるんや・・・・・・」
子供みたいに笑う浩平の横顔を見つめていると、隣にいることだけで、幸せに感じることができた。
「そんなに嬉しい?」
何がそんなに嬉しいのかわからなかった私は、何気なく聞いてみたが、返って来た言葉に顔があっという間に熱くなった。
「嬉しいよ。ゆかりの浴衣姿、かわいいからね。あっ、でも普段もかわいいよ」
恥ずかしげもなく、なんでこんなことが言えるんやろう・・・・・・。
自分が言ったことに動揺している私に、
「どうしたの?顔、赤いよ」
なんて言う浩平がわざと言っているのか、天然なのかは、私にはよくわからなかった。