あじさい~揺れる想い~
そんな幸せな気分は、そう長くは続かず、教室に入ると感じる視線につい目を向けてしまう。
「手塚さん、おはよう」
運悪く、2週間ほど前に行われた席替えで、私は渡辺くんの隣の席になってしまった。
「おはよう」
今までは話をしたこともなかったが、隣の席ともなると、否応なしに話をすることになる。
それでもできるだけ、私は彼から距離を置くようにしていた。
「ゆかり、おはよ〜」
相変わらず元気な理香は、私の席の前に座り話をするのが習慣となっている。
そして、隣では渡辺くんが何人かの友達と話をしていた。
「ゆかりも来週の花火を見に行くの?」
『も』ということは、理香も彼氏と行くんだと瞬時に判断をした。
「行くよ〜。浴衣も着る予定!」
理香に負けじと、私は自ら浴衣を着ることをアピールしたが、それが思わぬ方向へと話が進むきっかけとなった。