あじさい~揺れる想い~


「手塚さんの名前って、『紫』って書いて、『ゆかり』って読むんやね。かっこいいな!」


そう言いながら、いつもの鋭い視線ではなくて、優しい視線に、私は吸い込まれそうになっていた。


『変わってるね』とか『読みにくいね』とかは言われたことはあったけど、『かっこいい』なんて言われたことなんてなかったし。


「どうした?」


あまりにもぼんやりしていたのを不思議に感じた渡辺くんが、私の顔を覗き込みながら聞いてきた。


「あ、いや、なんでもない。渡辺くんの下の名前って何?」


失礼だとは思いながらも、聞いてしまったゆかりに、彼は丁寧過ぎる説明をしてくれた。


「太陽の『陽』って書いて『あきら』って読むねん。夏の暑い日に産まれたかららしい。なんか、単純やでな」


笑いながら言う、その目は細くなっていて、さらに違う印象を与えた。



「そんなことないよ。いい名前やと思うよ」


明るい彼にピッタリの名前だと思ったが、そんなことは言えるはずもなかった。




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