あじさい~揺れる想い~
手を繋ぎながら学校の敷地内に入ると、浩平が自分の右側に見える花壇を見て首を傾げた。
「あれって、あんな色やった?」
彼が歩くスピードを落とし、指をさす先には、あじさいが花を咲かせていた。
そのあじさいは、先週末までは白っぽい青色をしていたが、今朝は濃く変化していた。
私は、彼が学校の花壇の隅に咲く花を見ていたなんて思わなくて、驚くと同時にそんな細かなことに気付くことができる人であることが嬉しかった。
実際、彼は私が落ち込んでいる時や、体調が悪い時などは、一番に気付いてくれる。
「浩平、あじさいは、つぼみのころは緑、それが白くなり、咲く頃には水色、咲き終わりに近づくにつれて、色が濃くなるんやで」
彼は、詳しく説明する私に驚いたのか、目を丸くしていた。
「へぇ、ゆかり、詳しいんやね」
彼は大きな目を細めて、感心したように言うと、もう一度、あじさいの方に目をやったのを見て、私は続けた。
「おばあちゃんが教えてくれたの。こうやって、色を変えていくからか・・・花言葉は・・・」
私が言葉を詰まらせたことを不思議に思ったのか、彼はあじさいに向けていた視線をゆっくりと隣の私に向けて、先を促した。
「花言葉は?」
その落ち着いた声に、私は視線を合わせずに続けた。
「・・・移り気」
私の横顔を見ていた浩平は、何も言わずに繋いだ手を強く握った。
それはまるで、『僕の気持ちは変わらないよ』と言ってるように・・・。