あじさい~揺れる想い~
「言うさ・・・だって俺、手塚さんのそういう困った顔をするところとか、めちゃくちゃ好きやから・・・」
えっ?
この人、何を言ってるの?
私の頭の中はショート寸前で、何にも考えることができなくなっていた。
今回の花火大会でも1番大きな花火が打ち上がっている様子も見る余裕がなかった。
ドドドドーン!
地響きがしそうなくらい大きな花火が打ち上がると同時に、渡辺くんの唇が私の唇に重なった。
えっ?なんで?
私、なんでこの人とキスしてるんやろう・・・。
そう思った瞬間、私は彼を突き飛ばし、唇を手の甲で拭った。
「な、なんで・・・こんなことするん?」
すぐに問いただすと、彼は真剣な表情でゆかりを見つめ、口を開いた。
「ずっと、気になってた・・・ずっと見てた」
『ずっと見てた』
その言葉を現実にされると自分の胸か苦しくなっていくのがわかった。
「そ、そんなこと言われても、私には彼氏がいるし・・・」
俯きながら答える私に彼は、さらに強い言葉を投げ付けた。
「じゃあ、なんで目が合う?俺が手塚さんを見てたら、目が合うのは・・・手塚さんも俺を見てるからじゃないん?」
突き付けられた言葉が胸に深く深く突き刺さり、えぐられるように痛かった。
「そんなこと、知らん!」
私は、目を閉じて叫ぶように言うと、彼の元から立ち去った。