あじさい~揺れる想い~
次の日からテスト休みに入ったので、私は朝からパン屋のバイトに入っていた。
昨夜のことが頭に残り、あまり寝ることができず、ぼんやりしていた頭をバイトをしながら覚ましていた昼下がり。
「いらっしゃいませ」
笑顔でお客さんを迎えた私の顔が一瞬にして強張ったのに対し、その原因を作った本人は、涼しい顔をしながら、私に話し掛けてきた。
「何がお勧めですか?」
そのなんとも堂々とした態度に、私は一瞬たじろいだが、バイトのプロ意識があるのだろうか、笑顔で答えた。
「今焼きたてのメロンパンがお勧めですよ」
そう答えると客は、真っ先にメロンパンの方へと足を運ぶと、籠に2個入れて、レジの方に歩いて来た。
「今日、何時に終わる?」
真っすぐな視線を向けられても私はレジを打つ指を止めずにいた。
「2点で300円です」
客は黙って財布から、300円を出し、私からレシートを受け取ると、一言だけ残し立ち去った。