あじさい~揺れる想い~
『終わるまで待ってるから』
ストーカーかよっ!
昨夜、あんなことしたのに、なんで平気な顔で来れるんよ!
というか、なんで私のバイト先を知ってるんよ!
私は、突然現れた渡辺くんへの不信感を抱きながら、仕事を続けた。
「ゆかりちゃん、お客さんも落ち着いたから、上がっていいよ」
店長の明るい声が、この日ほど憎かったことはなく、私はとぼとぼと着替えて、店を出た。
店から出た私はキョロキョロと周りを見渡すと、胸を撫で下ろした。
あれから2時間も経ってるのに、待ってるわけないよね・・・。
渡辺くんの言葉を真に受けていた自分が、情けなくなると同時に、彼のことばかり考えていたことへの罪悪感が膨らんでいた。
早く帰ろう・・・。
そう思い歩き出した時、恐れていた影が近づいて来たのに気付き、足を速めようとした瞬間、声を掛けられた。
「手塚さん。逃げないでよ」
余裕などない必死さが伝わってくるような言い方に私は足を止めた。
というより、掴まれた腕を振り払うことが出来なかった。
「逃げないから、いい加減離して」
彼に言われるままに公園に連れて来られた私は、ベンチに座りながら彼から解放してもらおうとした。
「じゃあ、話を聞いてくれる?」
なんでそんな切なそうな顔をするの?
こっちが悪いことをしたみたいやん。
私は、隣に座る彼に腹立ちながらも、彼の要求に応じた。