あじさい~揺れる想い~
「用件は?」
自分でもこんなに冷たい声がよく出たものだと思いながらも、渡辺くんの顔を睨み付けた。
「冷たいなぁ・・・でもそういう顔も好きかも」
どこまで、この男は軽いんだか・・・。
「はいはい。それで、話は?」
苛立つ気持ちを抑えて、私は平静を装う。
「昨日のこと、ちゃんと謝ろうと思って・・・」
急に真剣な表情をして話し始める彼に、何も言えなくなってしまっていた。
「昨日は、あんなことをしてごめん。でも・・・・・・本気なんや・・・・・・」
真っすぐな視線が、痛いくらいで、身動きもとることができなくて、ただただ目の前の彼の話を聞くことしかできなかった。
「ずっと、気になってて、見てた・・・」
消えてしまいそうな声で、これまでの気持ちを伝える彼には、微塵の軽さも見られなかった。
「そんなこと言われても・・私のどこがいいわけ・・・?」
彼から視線を外して、必死に搾り出した言葉は、自分でもわかるくらい震えているのがわかったのと同時に、彼もまた私と同じ状況だった。
「て、手越さんに突っ込まれて、困った顔をしているところとか、なんか・・・・・・一生懸命なところとか・・・」
しどろもどろになりながらも答える彼の表情は、お互い視線を合わさずに話していたので、私はわからなかった。
「決め手に欠けるんじゃない?」
昨夜、彼に言われた台詞をそのまま突き返すと、彼は黙り込んでしまった。