あじさい~揺れる想い~
「はい、どうぞ」
そう言って、私に差し出したのは、2時間ほど前に私のバイト先で買ったものだった。
「手塚さんと食べようと思ってね。でも、せっかく焼きたてやったのに、冷めちゃったね」
このニッコリと笑う人と、昨日、私にキスをしてきた人は本当に同一人物なんだろうか・・・。
そう思うくらい、彼の笑顔が爽やかで眩しく感じた。
「冷めてもおいしいのが、このメロンパンのいいところなんやで」
とりあえず、何か話していないと間が持たないと思い、私は必要のない情報だとは思いながら、口にした。
「ほんまや!うまい!」
大きな口でメロンパンを一口頬張ると、再び満面の笑みで振り返って、感想を述べる彼にくぎづけになっていた。
「手塚さんも食べなよ」
何も言わないで自分のことを見る私の顔を覗き込んで、暢気に言う彼にため息を一つついて、言葉を発した。