あじさい~揺れる想い~


ギーッ

錆びた重いドアを開けると、フェンスにもたれ、空を見上げている人物を確認することができた。

暗くて、顔はハッキリ見えなかったが、私の方を見ていたのがわかり、ゆっくりと近づいた。

「なんで、こんなことするのよ!」

私は送られて来たメールを突き出し聞いた。



――――――――――――――――
花火を一緒に見よう。

この前の場所でずっと待ってるから。
――――――――――――――――



「嫌なら、無視して来なかったらいいやん・・・。彼氏と見に来たんやろ?」

暗闇に目が慣れて来て、ようやく目の前の彼の顔が見ることができた。

なんで、そんな苦しそうな顔してるんよ。

でも・・・。


「なんでやろう・・・。私・・・」

涙ぐみ、声を詰まらせる私を見て、彼はそっと私を抱きしめた。


「来てくれたってことは・・・俺を・・・選んでくれたってこと?」


ためらいながら聞く彼は、肯定も否定もしないで身を委ねる私を強く抱きしめた。


そして、私の頬に手を置いて顔を自分の方に向け、ゆっくりと顔を近づけると、私は目を閉じ、彼の唇を受け止めた。



一瞬重なっただけのキスが終わると、彼は私を見つめた。

その表情は、晴れやかなものだった。

しかし、私は彼をじっと見つめたが、表情を崩すことはなかった。




「・・・もういいでしょ?」



冷めた口調で言う私に、彼は目を真ん丸にして、彼は言葉を失っていた。


「・・・て、手塚さ・・・ん?」

ようやく出て来た言葉でさえもとぎれとぎれで、動揺している様子が伺えた。





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