あじさい~揺れる想い~
席に着くと、理香はニヤニヤしながら、体ごと私の方を向き、何か言いたげな表情をしている。
何を聞かれるかは薄々気付いている。
「相変わらず、ゆかりたちはラブラブやね〜。羨ましいよ」
よく言うよ。理香だって彼氏がいてて、かなりのラブラブぶりを見せ付けられたんやから・・・。
「理香だって、木下くんっていう、かっこいい彼氏がいてるやん」
私が教科書を鞄から机に移しながら言うと、理香は不満げな表情にかわるのがわかった。
「だってさ、うちは学校が違うから、手を繋いで登校なんてしたことないし〜」
始めは不満げな表情だったが、言い終わる頃には、『見たわよ〜』とでも言いたげな怪しげな笑みを零していた。
こうなったら、彼女は止められない。
私が何も言い返さないのをいいことに、理香は私に意地悪なことを言い始める。
「いつも手なんて繋いでないのに、今日はどうしたん?ゆかりがおねだりでもしたん?」
お、おねだり?!
「そんなんするわけないやん!」
私が動揺しながら早口でまくし立てるのを見て、理香は「顔が真っ赤」と笑いながら私をからかう。
まだまだ続きそうな理香の攻撃を止めてくれたのは、担任の米田先生の声だった。
「席に着けよ〜」
低い声は小さくても威圧的で、すぐにみんな席に着く。
そして1限目は米田先生の古典の授業なので、ホームルームから続けて授業に入った。