あじさい~揺れる想い~



「実はさ、僕、あいつと話したことがあるんや・・・・・・」


浩平の信じられない言葉に、私の涙は出るのをやめてしまった。


話したことがあるって?


「1週間ほど前かな、図書室にいる時に隣に座って来てね・・・・・・すぐにわかったよ。何かを仕掛けに来たって・・・」



落ち着いた口調で話す浩平は、私に話す猶予を与えずに、話を進めた。


「だから、僕から話し掛けた。ゆかりと同じクラスやね?って・・・・・・そしたら、顔色一つ変えずに『はい』って・・・・・・」


渡辺くんもすごいけど、浩平が彼のことを知っていて、自ら話し掛けたのには、心底驚いた。


「何を読んでるのかと思って、机に置いてあった数冊の本を見たら、
全部『花言葉』でさ・・・

なんでそんな本を読んでるのかが気になって聞いたら・・・・・その答えに驚いたよ」


えっ?彼は何て言ったの?



『好きな子の名前が、紫陽花から取られてるらしいんですけど、紫陽花の花言葉が”移り気”なんです。

彼女、それを気にしてるから、他にも花言葉はないかな?と思って・・・・・・』



「すぐに、ゆかりのことだとわかったよ。でも、僕は口にはしなかった・・・」



俯きながら言う彼の表情は、強張っていて、私は何も言うことはできなかった。





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