あじさい~揺れる想い~
「去年の梅雨の時期に、廊下であじさいの花を持ったゆかりとすれ違った・・・・・・
それがすごくかわいくて・・・・・・
その時から俺の中には、ゆかりしかいなくて、クラスとか名前とか調べて・・・・・・
そしたらさ、『紫』って書いて『ゆかり』って読むって聞いて、勝手に運命を感じてた」
運命?
どこが・・・・・・運命?
「あじさいは、『紫』『陽』の花って書くやん?」
あっ・・・・・・そういうことか・・・・・・。
「あじさいには、俺とゆかりの名前が入ってるんや・・・・・・どうこれ!絶対に運命やで!」
子供のように、はしゃぐ彼がかわいらしくて、私も笑みを零した。
「そうやね」
再び私達は唇を重ねて、運命を確かめ合った。
「俺らの子供は、『花』って名前に決まりやな!」
「気が早過ぎるし・・・・・・」
それに人の気持ちなんて、すぐに変わってしまうんだ・・・・・・
こうやって今は運命だなんて言ってるけど・・・・・・
これから何年も付き合えるなんてわからない・・・・・・
来年の今頃には別れてるかもしれない・・・・・・。
私の頭の中で考えていることがわかったのか、彼は私を抱きしめて、「離さない」と囁いた。
そして、私も彼の愛に深く頷いた。
fin