ガラスの靴じゃないけれど


「一条さん。次は何を飲む?」

「あ。もうウーロン茶で」

あまりお酒が強くない私は、目の前に差し出されたアルコールのメニュー表を見ることなく断りの言葉を口にする。

「そんなこと言わないでもっと飲みなよ。そうだな。スクリュードライバーはオレンジジュースがベースだから飲みやすいはずだ。すいません!」

店員さんを呼び止めて、勝手に私のカクテルの追加をオーダーするのは松本チーフ。

何故、松本チーフと並んでアルコールを飲んでいるのかと言うと、開発事業部の飲み会に誘われたから。

テーブル席の宴会個室があるこの居酒屋は、落ち着いた雰囲気が良いし、お料理も美味しい。

特にアスパラガスを丸ごと一本使った串揚げは、中はみずみずしくて衣はサクサクしていて、もう一本食べたくなるくらい。

どうして私が食べることに夢中なってしまったのかというと、望月さんの隣の席を占拠している溝口陽菜(みぞぐち はるな)さんが原因。

溝口さんは私よりひとつ年上とは思えないほどしっかりとしていて、バリバリと仕事をこなす。


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