ガラスの靴じゃないけれど
肩まで伸びている内巻きの髪の毛をふわりとなびかせながら、奥のテーブルで望月さんと笑い合う姿はドラマのワンシーンのようにサマになっていた。
仕事もできて、女子力もある溝口さんが羨ましい。
もう、食べることに夢中になるだけでは満足できなくなってしまった私は、つい、目の前にあったジョッキのビールを飲み干してしまった。
プハァと息を吐き出せば、いつの間にか私の隣には松本チーフが座っている。
そしてウーロン茶でいいという私を制して、勝手にスクリュードライバーをオーダーしてしまったのだ。
テーブルに運ばれてきた鮮やかなオレンジ色の液体が注がれたグラスを手にすると、松本チーフと改めて乾杯をする。
初めて口にしたスクリュードライバーはクセがなく、口当たりが良かった。
「ん。美味しいです」
「だろ?一条さんにはいつも雑用ばかり押し付けて悪いと思っている」
「いえ。それが私の仕事ですから」
「そういう謙虚なところが、またいいんだよなぁ」
松本チーフは何故か鼻の下を伸ばしながら、目尻を下げた。
もしかしたら、酔っているのかもしれない。