ガラスの靴じゃないけれど
飲み会がお開きになってから、随分と時間が過ぎてしまった。
そのまま帰った人もいるだろうし、二次会に行った人もいるだろう。
望月さんと溝口さんは?
どうしても、ふたりのことを考えてしまう自分を情けなく思いながらトイレから出ると、そこには腕組みをしながら壁にもたれ掛っている望月さんの姿があった。
「も?望月しゃん?」
「しゃんって...。それより若葉?気持ち悪いんじゃないの?大丈夫?」
「い、いえ。大丈夫れす」
眉を寄せながら心配げな表情を浮かべた望月さんは、組んでいた腕を解くと私の手を握る。
「ちっとも大丈夫そうじゃないよ。家まで送る。おいで」
私を心配してくれる望月さんの気遣いは嬉しかったけれど、手を繋いでいるところを誰かに目撃されては大変だ。
「望月さん?みんなは?」