ガラスの靴じゃないけれど
目が覚めると、隣に望月さんの姿はなかった。
身体を起して周りを見回せば、ローテーブルの上に紙が置いてある。
裸のままベッドから起き上がり、その紙を手にすれば、望月さんの綺麗な文字が並んでいた。
<仕事なので先に出ます。会計は済んでいるから。>
今日は土曜日。
前の日に飲み会があっても、休日出勤しなければならないなんて......。
私は再開発プロジェクトの苦労を、改めて痛感した。
あれから---。
ふたりが初めて結ばれた後、望月さんは私を優しく抱きしめると、すぐに眠りに落ちてしまった。
初体験の恥ずかしさも痛みも乗り越えられるのは、彼とひとつになれる悦びの方が勝るから。
でも今の私は悦びよりも、虚しさと寂しさが募るばかり。
想像していたものと大きくかけ離れてしまった初体験を思い出しながら、私はラブホテルの一室でまだ鈍く痛む下腹部にそっと手を当てた。