ガラスの靴じゃないけれど
佐和子先輩の言葉にどことなく刺があるように感じたのは、私の気のせい?
今まで誰にも内緒にしてきた恋だったけれど、胸に燻り続けている想いを相談できるのは目の前にいるふたりしかいない。
私は、覚悟を決めて答えを口にした。
「その、まさかです」
ふたり同時に「ええ~!」と大きな声を上げた時、オーダーしたトッポギとサムギョプサルがテーブルに運ばれてきた。
程々にお腹が空いていた私は、サムギョプサルのお肉を焼こうと手を伸ばす。
でも、その私の手を、佐和子先輩が勢いよく掴んだ。
「食事は後!先にふたりの馴れ初めを聞かせなさい!」
先輩命令に逆らうことができなくなった私は、密かに望月さんに恋心を抱いていたことを。
会議室でふたりきりになった時に、望月さんから交際を申し込まれたことを。
そして二週間前に結ばれたことを、ふたりに打ち明けた。
「いい感じで付き合っているじゃない。そこになんの悩みがあるのよ?」
「そうですよ。あの望月さんが相手なら、何も悩む必要なんかないじゃないですか」
やはり、望月さんは人気がある。